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2013年4月16日 (火)

「えずまんえん」か、クロスバイクか。

頼まれていた庭木の剪定を午前中に済ませ、昼食のパンを買いに自転車で5kmほど先のスーパーマーケットに行き、いつものように店頭に駐輪してロックをかけていたら、「これ、軽いんでしょ?」と声をかけられた。振り返ると、ショッピングカートを引いたおばあさんだ。まさかこのおばあさんが自転車にと思ったけれど、ずいぶんと自転車に興味をお持ちの様子なのだ。ぼくはダホンのボードウォークに乗っていたから、まわりのママチャリを見回しながら「ああいうのよりは、ずっと軽いです」と答えた。

「材質も違うんだろね。ステンレスとか、そういうので出来てんの」

「これはスチールですけど、今はアルミとかカーボンとかね、軽いですよ」

「いやぁ、お父さん(ぼくのこと)が、ずいぶんと軽そうにすーっとここさ入ってきたもんだからね」

「(へえ、そんなところから見てたんだ)」

「値も高ぇんでしょ」

「そんなでもないですよ」

「孫の通学にね、自転車」

「ああ、お孫さんのですか」

「そうよ。高校入ったでしょ」

でしょって言われてもね、と笑いながら話を聞いた。

「その子の父親がねぇ、自分のクルマは最高級品だっつーのに、子供の自転車は1万円(えずまんえん、と発音する)ので十分だっていうのよ。だけど三年間も乗るんだし、あまり安いのはどうかと思ってさ」という。やさしくて素敵なおばあちゃんだ。

さすが自転車を見て声をかけてくるだけあって、いろいろと話が通じておもしろい。普段から気にしていたんだろう。通学用というからカゴ付きのがいいのかと思ったら、孫は学校行くのもリュックだからカゴはいらないんだと。そこまで見て、考えていた。

「軽い自転車はいいですよ。漕ぐのも楽だし、とっても速いし、なんといっても乗っていて楽しい」

「ずいぶんするんでしょねぇ」

「ピンキリですけどね、これは4万ぐらいだし、5〜6万でずいぶんちゃんとしたのありますよ」

「ああ、そう。それに安いのはすぐ錆びてしまうでしょ。ここんとこ(チェーンあたり)とかねぇ」

「高いのでも手入れしなければ錆びますよ。でもちゃんとした自転車は大事にしようと思うからね」

「こういうの、いいねぇ」

「これは折りたたみでね、毎日通学するなら折りたたみでない、タイヤの大きい方がいいかな」

「どこで買えばいいんだろ。自転車屋か、ジョイフルみたいなとこ」

「そうね、スポーツ用の自転車の専門店もあるから、そういうとこで相談するのもいいかも」

「盗まれねーかなと思ってさ」

「自転車盗難多いんですよね。鍵もかけずに粗末にしてる人も多いから」

「人を見たら泥棒さ思えってね、嫌な世の中だけんど」

「盗まれないように、大事にさせないとね」

「やっぱりちゃんとした奴のほうがええねぇ」

「通学用の丈夫な自転車もあるけど、やっぱり重たいから遠くに行こうとは思わないでしょ。軽い自転車がいいです。すぐに水戸でもどこでも自分で行くようになりますよ」

「体力もあるがらね」

「そうです。通学だけじゃないから」

「んだねぇ。ちょっと話してみっか」

「ええ、そうしてください」

パンを買っての帰り道、タンポポ咲き乱れる田舎道を走りながらあれこれ考えていた。おばあちゃんに買ってもらったピカピカのクロスバイクで風を切って走る高校生。想像するだけで楽しい。ぜひそうあってほしい。そういえば男の子か女の子か聞かなかった。まあどっちでもいいや。でもそれにはその子の父親が邪魔だ。いっそ俺が消してやろうか……。いやいやそうじゃない。

でもほんとの話、こういう土地の高校生にこそ良い自転車が必要なんだ。「えずまんえん」のではなく、そこそこ軽くて、速くて、遠くまで乗れる自転車。ちゃんとしたクロスバイクがいいと思う。

ここから水戸まで20km。それをぼくが自転車で行くというと、ここらでは皆驚く。クロスバイクどころか折りたたみ自転車でも行くよというとさらに驚く。だがちょっと待ってほしい。20kmなんて史上最貧を誇るぼくの脚でも1時間だ。電車だって40分かかるし、駅は遠く、しかも電車は1時間に1本しかない。行った先での移動だって自転車の方が便利だ。さっきのおばあさんが話していたジョイフル本田や巨大ショッピングモールに映画館、できたばかりの蔦屋書店などが密集するひたち海浜公園の商業地区まで行ってもやはり20km。これを電車で行くと……いや、こっちは電車では行けないのだ。事実上。だって最寄りの勝田駅まで行くのに水郡線で一旦水戸まで出てから常磐線で戻らなければならず、勝田駅から海浜公園まではタクシーかバスを使うことになって片道2時間もかかるし、交通費だけでお小遣いが吹っ飛んでしまう。だがそれを自転車で行けば1時間、しかも無料だ。でも自転車で行こうなんて思う人はまずいない。原付すらほとんど見ない。ほぼ全員、移動はクルマと決まっている。となると運転のできない子供は、親について行くしかない。

これを不自由と呼ばずに何と言おう。自分の意志で行きたいところに行く自由というのは、人としての旅の始まりの証で、それが大人への第一歩なのに、その自由がない。

何もこの土地に限った話ではなく日本全国どこでも同じようなものだと思う。道が良いとか悪いとか、安全か危険かなどという問題ではなく、完全にアタマ=意識の問題だ。「10km、20kmを日常的に自転車で移動する」ということの現実味がまったく理解できていないから、親は子供に良い自転車を与えようとしない。でもそれは間違っている。交通至便な都市はまだいい。交通不便な地方ほど、子供には移動手段が必要なのだ。そこでは自転車こそが、子供に自由をもたらし、自立を促す翼になる。この自転車で好きなところに行ってこい。自分の力で行け。どこをどう行くか自分で考え、必要なことは自分でやれ。そして大人になれ。そういうもんじゃないか。

だから、子供にはクロスバイクを買ってあげよう。そして子供たちが自分の意志と力でどこにでも行けるような社会を作ろう。もしもそれが危ないというのなら、それはクルマに乗っている大人のせいだ。未来に対して恥ずかしいことだ。そこを変えよう。

うららかな昼前のスーパーの店先で、孫思いのおばあさんと自転車の話をしただけなのに、あらためてこんなことを思った。

もしかするとあのおばあさんは、自転車の神様だったのかもしれない。

では。

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コメント

会社のイベントをする10km離れた公民館へ自転車で行ったら、自転車で行く距離ではないと注意されて、はぁ〜?となりました。
茨城の様な道幅が広く、信号が少なく、車も少ない自転車天国と思われる県は補助金出しても軽い自転車を普及してけばいいのに。

投稿: Nasman | 2013年4月16日 (火) 20時01分

Nasmanさん
いつもありがとうございます。

ほんと、そう思います。
どこを走っても自転車天国なのに、自転車に乗っている人があまりに少ないですよね。大人も子供も。
それがいかにもったいないことか、気づいてほしいです。

投稿: タニグー | 2013年4月16日 (火) 23時37分

こんにちは。たまたま通りすがったものです。

私は最近クロスバイクを買いました。

うちには自動車はないため、歩いていける所、ママチャリで行ける所、電車で行けるところが基準でした。

だけど、クロスバイクを手に入れたその日から、行けなかった場所に気軽に行けるようになりました。

10Km先の公園にも行けました。夢のようです。

運動不足でメタボなおっさんのため、遠出は勇気が必要ですが、体をならしながら少しずつ行動半径を広げていきたいと考えています。

ホントクロスバイク最高ですね!

投稿: ユーカリくん | 2013年10月 8日 (火) 14時06分

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